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今井哲也先生出身!中央大学特別試写会実施。
今井哲也先生と黒川智之監督が登壇!


劇場アニメ『ぼくらのよあけ』の原作者、今井哲也先生の母校である中央大学にて特別試写会が行われ、今井哲也先生と黒川智之監督が登壇。試写会後に学生からの質問に答えるトークショーを実施しました!

本編上映後に盛大な拍手と共に登壇した今井先生と黒川監督。母校の中央大学に久しぶりに訪れたという今井先生は「不思議な気持ちです。改めて大学にこうして迎えられるのは、大学で学んだことを活かした結果でしょうか?」と笑いを誘いつつ、
母校でのイベント登壇に嬉しさが滲み出ていた。黒川監督は「本日はお邪魔しています。こうして実際に映画を観た方の前に立つのは本当に貴重な機会です。」と感慨深く会場を見渡しました。

Q&Aコーナーが始まり、司会から学生に呼びかけると早速挙手が。アニメーション研究会の学生から、研究会のOBでもある今井先生へ【研究会のOB漫画家になった経歴を知りたい】と質問されると、「学祭前は研究会のみんなと模造紙にポスターを描いたりしていました」と今井先生は学生時代を振り返りつつ、「元々漫画を描くのが好きで学生時代も趣味で書いていて、大学4年生の時に新人賞を獲ったので就活をせずに漫画家を目指すことになりました。2年くらい地元の書店でアルバイトをしながらネームを出していましたね。その後「アフタヌーン」でデビューして、『ぼくらのよあけ』は2つ目の連載です」と漫画家になった経緯を語りました。
一方、黒川監督は最初から“監督”になりたい少年ではなかったそうで、「(悠真たちと同じ)小学生のころはSF映画が好きだったので、ミニチュア作ったり特殊メイクをやりたいと思っていました。高校の時に、とある映画との出会いをきっかけに映画監督を目指すようになりました」と語りました。


続いて、【団地の思い出、地球外生命体との接触、人間とA Iの関わり、の三つのテーマが複雑に関わっている印象を持ちました。アイデアのきっかけを聞かせてください】との質問に対しては、今井先生は「原作を書いたのが10年以上前なのでうろ覚えですが」と前置きをしつつ、「最初に“昔地球に来て眠っていた宇宙船を子供たちが見つける”という発端から、宇宙船がしゃべったら?面白い宇宙船も子供たちもどちら側にもロボットがいたら?などとプロットを作っていきました。影響としては、私は「ドラえもん」がすごく好きなので、 “人間とロボットが友達”など、影響を受けているところがあると思います」と当時を思い出しながら語りました。
また、黒川監督は原作から劇場アニメにする際に「子供たちがいきいきしている話にしたい」と強く思い、脚本を担当した佐藤大とアイデアを出し合いプロットを作り、今井先生に話の骨格を提案した経緯を明かしました。

また、今井先生の作品をいつくか読んだという学生からは【今井先生の作品に登場するキャクターが繊細でリアルです。気をつけている点はありますか?】との質問が。今井先生は、悩みながらも「作品を作るときは軸になることをメインに、どうしたら面白くなるのかを考えています。その時々に、シナリオが面白くなる台詞や性格・行動を考えることが多いです。例えば『ぼくらのよあけ』では、子供のキャラクターたちは、大人にとっての理想像的な子供では無いようにしています。また、作者としてハンドリングは難しくなりますが、子供にできないことはさせないようにしています。」とこだわりのポイントを語りました。
司会から「劇場アニメでは悠真の成長が特に描かれていますね」と話が向けられると、黒川監督は「原作を読んで、子供のいきいきとした姿やAIと友達になるところを描きたいと思いました。原作が素晴らしくドラマとしてチャレンジングだなと思ったのは“わかりやすい悪役”が出てこないこと。(悪役がいると)そこでアクションができるので全体の話が組み立てやすく、ハラハラドキドキし、わかりやすいのですが、この映画ではそういった悪役はいないけど120分の映画として盛り上げなくてはいけませんでした」と話を構成する上での難点を挙げ、「主人公の悠真にとって、わかりやすい敵はいませんが何かと戦っているように感じられるように、映画では原作にはない“団地が取り壊される”という要素を入れて、“引っ越しの準備をしない”など悠真なりの信念や反抗を描きました。わかりやすい悪役がいなくても120分のドラマが描けるんだという発見がありました」と制作秘話を語りました。


続いて【漫画家人生で辛かったこと】を質問した学生に、今井先生は「締め切りまでに原稿を書くのは毎回大変ですね。アニメ化になると嬉しいのですが、アニメサイドからシナリオやデザインなどチェックするものが大量に発生するので、なんて大変なんだ!と思います」と述べ、「『ぼくらのよあけ』は2011年1月発売号から連載し、途中に震災があり、製紙工場が被災して雑誌が出るかどうかわからなくなった時がありました。それでも、描けば誰かが読んでくれて少しでも元気になってくれるかなと思いながらネームを描いてました」と連載時のエピソードも明かしました。
一方、黒川監督は、アニメーション制作について聞かれると「辛くない作業はないですね。産みの苦しみは漫画もアニメも同じだと思います。」と苦笑い。「ただ苦しく感じるからこそ、想いを込めて作れるところもあって、『感動した』『好きです』と言ってくれる達成感は作品を作らないと得られないです。まだ見ぬお客さんに向けて作っている感覚は常にありますね。」と作品への向き合い方を語りました。

【原作から劇場アニメする際に、限られた尺で何を描くかの取捨選択】について問われた方黒川監督は「『ぼくらのよあけ』についていえば、脚本の佐藤さんとディスカッションし、”悠真とナナコの関係性“ “悠真とナナコの初恋物語”として描く方向性にしました。本編を観ていただくと、物語冒頭から悠真を追っかけていて悠真が写ってないシーンはほぼありません。二人に直接かかわらないエピソードはカットしていきました」と述べ、【作品がいろんな人から様々に解釈されること】については「意図と違う時はありますが、その人の解釈があってるかどうかが大事ではないと思います。ただ、伝わることの喜びは大きいですね」と語りました。


【2049年が舞台ですが、団地があり近未来だけどノスタルジーを感じる世界観が印象に残りました。意識された部分ですか?】との質問に対し、今井先生には「古いものと新しいものが混在している世界観は、現実もそうなっていますよね。元ネタは鉄腕アトムですね。古い街並みとロボットが描かれていて…」と明かしながらも、「現実でも、例えば、21世紀になったら建物や道路などが一斉に入れ替わるわけではなくて、建物は古くて電話線だけ新しいなどといったように少しずつ変わっていきます。このキャンパスには10年ぶりに来ましたが、新しい建物があったり、建物は同じでも机や椅子が変わっていたりしますよね」と当日の会場も例に挙げながら自身の学生時代も振り返りました。